新型コロナウイルス感染予防の観点から、今年度の学校生活や行事には様々な制約が出ています。
運動会を中止にした自治体、学校も多いようです。
福岡市教育委員会は30日、市立小中高校と特別支援学校の全225校で、本年度の運動会を中止すると明らかにした。市教委が同日、各学校長に中止を通知した。新型コロナウイルスの感染リスクを避けるほか、臨時休校が長期化しており、学習の遅れを取り戻すことを優先させる。同市で市立学校の運動会が一斉に中止されるのは極めて異例。
2020年5月1日 西日本新聞「福岡市立全校の運動会を中止 異例の対応、学習遅れの挽回優先」
大阪府東大阪市の市立英田(あかだ)南小は1~5年生の運動会は実施せず、10月30日に6年生89人だけで行う。全学年での実施も検討したが、近隣には全面中止を決めた小学校もあり、参加者が多ければ感染症リスクも高まると判断した。
2020年9月29日 産経新聞(Yahoo!ニュース)「中止、規模縮小…コロナで変わる運動会・体育祭」
しかし、感染防止や授業時間確保と運動会を両立させ、開催している学校もたくさんあります。
A小学校
平日に2日間に分けて開催。観覧は各家庭2名まで。
来賓招待あり
・1日目は1〜3年、2日目は4〜6年。
・内容は徒競走と演技(団体競技はなし)。
・午前中で終了。お昼は給食。11:30終了。
B小学校
土曜日に全校で開催。3部制。13:00終了。弁当あり。
来賓招待なし
参観は各部入れ替え制(各家庭1名)
・1部 1、3、5年(徒競走、演技)
・2部 応援、リレー
・3部 2、4、6年(徒競走、演技)
開閉会式はテレビ放送
C小学校
第一部は平日(保護者参観なし)、第二部は土曜日(各家庭1名までの観覧)
来賓招待なし
・第一部・・・・主に団体種目
・第二部・・・・主に団体演技(観覧は入れ替え制)
12:30終了
いずれも同じ自治体の小学校ですが、同じ自治体でもこのように全然違う取組になっています。
共通していることは
- 蜜を避けるため、分散開催。
- 時間短縮のため、団体競技の中止。競技は徒競走のみ。
- 保護者の観覧の制限。来賓は呼ばない。
という取組をしているということです。
授業時間確保のために行事を中止するという自治体も多いのですが、学校行事も学習指導要領で位置づけられている特別活動の中の教育活動です。
学習指導要領では、「特別活動」を次のように位置づけています。
(1) 多様な他者と協働する様々な集団活動の意義や活動を行う上で必要となることについて理解し,行動の仕方を身に付けるようにする。
学習指導要領(平成29年告示)
(2) 集団や自己の生活,人間関係の課題を見いだし,解決するために話し合い,合意形成を図ったり,意思決定したりすることができるようにする。
(3) 自主的,実践的な集団活動を通して身に付けたことを生かして,集団や社会における生活及び人間関係をよりよく形成するとともに,自己の生き方についての考えを深め,自己実現を図ろうとする態度を養う。
つまり、学校行事では、「他者と協働しながら、課題解決したり合意形成したりしながら、人間関係をよりよく形成し、自己実現を図る」ことを目的としていると言えます。
もちろん普段の学習でもこのようにことは重視されているのですが、学校行事ではより同学年や異学年との交流を通して実現するので、より効果的に実現できるのです。
いわゆる「見える学力」のための授業時間確保のために削っていいものではありません。
組み体操での事故・怪我の問題のように、華美になった行事はなかなか縮小の方向には向かわず、子どものためではなく、地域や保護者のため、教師集団の自己満足のためになってしまうことは多々あります。
今年度「三蜜を避ける」「衛生に留意する」「時数確保との兼ね合いをする」等の工夫をして運動会に取り組んだ学校は、本当に必要なことを考えるよい機会になったと言えます。
今回実現した運動会の取組は、本当に子どもにとって必要なことを精選した、新しいスタンダードになっていくのではないでしょうか。
筆者の関わっている学校の先生方、子どもたちの様子を見ていると、子どもたちはとても楽しそう練習に取り組み、先生方も生き生きしています。
やはり学校は「集団で学び合うことにより協働して自己実現する場」であって、一斉授業、オンライン、オンデマンドだけでは学校は成り立たないのです。
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参考
・2020年6月4日Yahoo!ニュース「運動会、体育祭、文化祭などの行事の中止、本当にそれでいいのか?【学校再開後の重要課題(2)】」
・2020年9月29日産経新聞(Yahoo!)「中止、規模縮小…コロナで変わる運動会・体育祭」