小学校では音楽、家庭など一部の教科を除き、担任が全部の教科を教えるのが当たり前でした。教職員定数もそのことを前提としています。
しかし、最近は高学年を中心に小学校でも教科担任制を取り入れる学校が相当増えています。
教科担任制、都道府県の7割弱「推進」 文科省会議調査
2020年11月24日 教育新聞
文科省の「義務教育9年間を見通した指導体制の在り方等に関する検討会議」は11月24日、第2回会合を開き、同検討会議の一環として行われている調査研究の途中経過を報告した。それによると47都道府県のうち31自治体、20政令市のうち15自治体が小学校での教科担任制を推進していることが分かった。
小学校で教科担任制を取り入れる学校、自治体が増えてきたのにはどのような事情があるのでしょうか
目次
メリット
複数の先生が指導することにより「荒れ」を防ぐ
クラスの子ともに対して指導が通らなくなり、「荒れ」てしまうことがよくあります。このような時、クラスの子どもと担任だけしか関わる人がいないと、双方とも心が辛くなりますし、そのような状態になってから複数の先生が関わっても「時既に遅し」です。
最初から複数の先生が関わることにより、担任との相性の善し悪しでクラスの落ち着きが左右されることが防げますし、担任一人では気づかない問題点に早く気づくこともできます。
先生の専門性が生かせる
小学校の先生はオールラウンダーであるべきですが、実際には指導に得手・不得手がありますし、専門教科もあります。
専門的に学んだり研究していたりする先生がその教科を教えることにより、より高いレベルの授業をすることもできます。
教える教科が減ることによる負担軽減
若手の先生ほど教材研究に時間がかかります。一般的には高学年の場合、7教科位は教えることになるので、教材研究や授業準備の負担は大きいです。教える教科を担任間で分担し、教科担任制にすることにより、4教科位の準備で済むことになります。
学年間教科担任制の例
指導者 | 指導内容 |
自分のクラス | 国語、算数、道徳(総合、学活) |
A組の先生 | 体育 |
B組の先生 | 図工 |
C組の先生 | 社会 |
D組の先生 | 理科 |
専科教諭 | 音楽、書写 |
担任がT2 | 英語 |
デメリット
では、学年間教科担任制を行うに当たって、デメリットはないのでしょうか
カリキュラムマネジメントがしにくくなる
現行学習指導要領の特徴の一つに「カリキュラムマネジメント」が挙げられます。教科間の関連を図ることにより、指導を効率的にし、学びを深めることを狙っています。例えば
- 社会で活用したい資料の見方を算数と関連づけて学ぶ
- 国語のまとめ、伝える単元と総合を関連付けて学ぶ
- 生活科で伝えたいものを作る作り方を図工と関連されて学ぶ
- 学習でお世話になった方への手紙の書き方を国語と関連させて学ぶ
などです。
教科の学びを子どもの実態と関連付けてカリキュラム・マネジメントをするためには、一人でたくさんの教科を担当しているからこそやりやすいと言えます。
教科担任制でカリキュラム・マネジメントをするには、教師間のすり合わせや情報共有のため、かなりの時間と手間が必要になるのです。
先生の時間的負担減にはならない
1人1人が教える教科数は減りますが、その分他のクラスで授業をしているわけですから、時間的な負担が減るわけではありません。教科により週の時数は異なっているので、均等に時間を割り振る訳にはいきません。人によっては自分のクラスだけで授業している場合よりも、授業時数が増える場合もあります。
そして、担任しているクラス以外のクラスの評価もすることになるので、そのための負担や、他の先生とのすり合わせはかなり大変です。
教職員定数を増やさない限り、抜本的な解決にならない
このように、学年間で教科担任制をしても、教師の負担軽減にはあまり繋がらないことがわかります。
「なぜ小学校には副担任はいないのか?!」の記事にあるように、教職員定数法により学校ごとの先生数は決まっています。
全校12学級の場合は、担任以外の先生の配当は2人しかいません。
この法律を改定して、小学校も中学校と同程度の定数にしなければ、小手先の改革だとしか言えないでしょう。
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