「教師の日」聞いたことありますか?あまり普及していませんし、教師自身や学校関係者にもあまり知られていません。筆者も知ったのはつい数年前です。
実は以前から教師の日はいろいろな国で制定されていたとのこと。その場合、地元の教育者や教育における重要な日を記念日として定めている場合が多いです。
「教師の日」一例
国 | 日にち | 由来 |
中華民国 | 9月28日 | 孔子の誕生日 |
チェコ / スロバキア | 3月28日 | コメニウスの誕生日 |
ペルー | 7月6日 | 初めて師範学校が設立された日 |
大韓民国 | 5月15日 | 世宗大王の誕生日 |
10月5日は「世界教師デー」
そして国際的には国際連合教育科学文化機関 (ユネスコ/UNESCO)により1994年から10月5日を「世界教師デー」と定めています。
世界教師デー (World Teachers’ Day) とは、毎年10月5日に行われる国際デーである。1966年にユネスコと国際労働機関 (ILO) により「教員の地位に関する勧告」が採択されたことを記念し、1994年から開催されている。
Wikipediaより
世界教師デーは、「世界中の教育者の立場を認め、評価し、改善する」ことに焦点をあて、教師や教育に関連する問題を検討する機会となることを目的としている。
日本でも10月5日を「教師の日」とする動き
日本では10月5日は祝日と定められていませんが、それを「教師の日」と制定しようとする動きがあります。
OECD(経済協力開発機構)の調査では、日本の教師の労働時間は主要先進国の中でも最も厳しい水準にあり、多岐に渡る事務作業の他、放課後の課外授業の指導、保護者の対応など授業以外に費やす時間が年々増加傾向にある。
Wikipediaより
そのため、教師のモチベーション、社会的地位を維持向上させるべく、有志団体(のちに一般社団法人「教師の日」普及委員会となる)により、「教師の日」を契機として社会機運を醸成し、社会全体で教師に感謝し、応援するムーブメントが始まった。
教師のモチベーション、社会的地位の向上のため、「一般社団法人『教師の日』普及委員会」が中心となり、普及・啓発を図っています。
日本の「教師の日」普及の歴史
年 | 主な出来事 |
2015年(平成27年) | ・Japan Teacher’s Week 2015 実行委員会主催として教師の日の普及活動を開始 ・渋谷区内の小学校2校で手紙とかすみ草の花束を贈るサプライズセレモニーを開催 |
2016年(平成28年) | ・一般社団法人「教師の日」普及委員会設立 ・感謝のサプライズセレモニー開催校が渋谷区内に拡大。中学校が加わる |
2017年(平成29年) | ・教育再生実行会議総長が、安倍首相に対し、「10.5 教師の日」の創設を求める ・感謝のサプライズセレモニー開催校が渋谷区から中野区に広がり、私立学校にも広まる ・ウェブサイト上で「先生のコトバ展」開催 |
2018年(平成30年) | ・ウェブサイト上で「先生のコトバ展」開催 ・元プロボクサー内藤大助氏が日本初の教師の日広報大使に任命される |
2019年(令和元年) | ・ウェブサイト上で「先生のコトバ展」開催 ・元AKBの増田有華さんが教師の日広報大使に任命される |
2020年(令和2年) | ・「教師の日」特別ウェビナー『「先生、ありがとう」から、教育を変える』開催 |
「働き方改革」の逆行にならないように
最初に「教師の日」を知ったとき、「いいよ、恥ずかしいから」と思ったものです。「感謝」は自然にされるもので、わざわざ日を設けしてもらうものではないと思ったからです。
しかし、「母の日」「父の日」「こどもの日」が自然に違和感なくあることを考えると、「教師の日」も普及すれば自然に感じるかもしれないし、「海の日」「山の日」が祝日になったように、今後の関連団体の運動次第では祝日になるかもしれません。
日本の教師の日は「教師のモチベーション、社会的地位を維持向上させるべく」とありますが、元々の「世界教師デー」の趣旨は「世界中の教育者の立場を認め、評価し、改善する」だったはずです。日本の教師の日には「改善」という視点が抜けています。
「世界一忙しい」「定額働かせ放題」と言われている日本の教師の労働環境をそのままにして、「やりがいのある感謝される仕事なのだからお金や労働環境を気にせず働こう」という「やりがい搾取」を助長させようという意図が隠れていると見るのは考え過ぎでしょうか。
本当に「教師の社会的地位向上」を目指すのなら、「感謝」「モチベーション」とセットて「働き方改革」「労働条件・環境改善」を図る運動になってほしいと思います。
参考:文部科学省「一般社団法人「教師の日」普及委員会【テーマ5】成果概要」
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