東京都教育委員会は4月24日、昨年度採用した公立学校の新任教諭のうち、1年以内の退職者が169人だったと公表しました。全体の4.9%を占め、都教委の集計によると過去10年で最多。ほとんどが「自己都合」による退職とのことです。
東京都の新任教諭、4.9%が1年以内に離職 過去10年で最多 [東京都]:朝日新聞デジタル
このニュースを受け、ヤフコメになどでは
今の時代、教師を目指している人はどれくらいいるんだろう? 私は絶対になりたくないな。
適切な労務管理もなく、児童生徒のために教員が力を発揮し働くことができる環境ではないです。
など、学校の労働環境の悪さによるのではないか、というコメントが多く見られます。
公立学校の働き方に問題が多いのは事実で、だからこそ「働き方改革」を一層進める必要があるのですが、この「4.9%」という離職率は果たして高いと言えるのでしょうか。テータから検証してみたいと思います。
東京都の1年目離職率の推移
東京都の新規採用教員のうち、年度途中で退職した割合は以下のようになっています。
平成29年(2017年) | 2.4% |
平成30年(2018年) | 2.7% |
令和1年(2019年) | 3.3% |
令和2年(2020年) | 2.7% |
令和3年(2021年) | 4.0% |
令和4年(2022年) | 4.4% |
令和5年(2023年) | 4.9% |
これを見ると、2%台で推移していた1年目離職率が、令和3年度から4%を超えていることがわかります。
全国平均との比較
この東京都の状況を、全国平均と比べてみます。
公立学校の1年目離職率は毎年1%前後です。
また、文部科学省が出している文部科学統計要覧(令和3年版)によると、公立学校の教員全体の離職率は、1.37%になります。東京都の離職率が高いことがわかります。
他の業種との比較
厚生労働省では「新規学卒者の離職状況」として、学歴別に3年以内の学卒者離職率を公表しています。
この資料によると、令和4年3月大学卒の1年目離職率は、12.0%です。
ここ5年程、10~12%の間を推移し、あまり変わりありません。
新規学卒者の離職状況 | 厚生労働省 Ministry of Health, Labour and Welfare Japan|厚生労働省
教員の離職率はとても低い
全国平均より著しく低い東京都の教員の1年目離職率ですが、それでも全産業と比べると半分以下、全国平均と比べると「1/10」になります。つまり、
他の業種と比べるととても離職率が低い
と言えます。若い教員が早期退職する傾向が増えたのは事実ですし、教育現場にいると「最近の若い先生はすぐ辞める」と思ってしまいますが、民間企業に比べると、全然辞めてないと言えます。
低い離職率を維持するためには
公立学校の採用倍率は年々低下していますが、X(旧twitter-)の投稿を読むと、教員の早期退職者の「辞めてよかった」という投稿が目立ちますが、一部の声に過ぎないと言えます。
イメージと違い、民間企業に比べて公立学校教員の離職率が低いのには
雇用の安定
福利厚生のよさ
有給(年休)、産休・育休、療休の取りやすさ
ハラスメントの少なさ
などの要因が考えられます。
また、教員採用試験の受験者を増やすためにも、離職率の低さ(定着率の高さ)をもっとアピールする必要があるでしょう。
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