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2022年度 第2回メディア教育研究会「ブッククラブをしよう 〜リーディング・ワークショップ〜」報告

プログラムの概要

日 時:2022年7月9日(土)14:00〜15:30

場 所:zoomにて開催

テーマ:「ブッククラブをしよう 〜リーディング・ワークショップ〜 (オンライン開催)」

講 師:今村 俊輔 先生(横浜市立茅ケ崎台小学校 主幹教諭)

プログラム

  1.  オープニング挨拶
  2.  ミニ実践紹介
  3.  実践発表
  4.  ブレイクアウトセッション
  5.  共有タイム
  6.  まとめにかえて
  7.  次回予告

1.オープニング挨拶(代表:後藤)

 参加者へのお礼と今村先生の紹介がありました。

2.ミニ実践紹介(事務局)

鈴木先生

 デジタル教科書とロイロノートを使って心情曲線を描き,共有した実践が紹介されました。

 これまでもワークシートなどを使って取り組まれてきた心情曲線ですが,デジタルにすることで読み取ったところをプロットし,線で結ぶだけなので簡単に作成できたそうです。さらに,クラスの友達との比較が一目ででき,その効果を実感されたそうです。

 難点は,どの言葉で心情が変化したと読み取ったかという細かい読み取りが難しいところだそうです。

 一人一人の読解を協働的な学びを通じて精緻化する,そんな授業の工夫で深い学びへとつながる実践でした。

千葉先生

 生活科の実践が紹介されました。栽培している野菜の写真を撮り,気付いたことを書き込んでいったそうです。初めはタブレットを使った記録に戸惑いながら取り組んでいた子も,操作に慣れることでたくさんの気付きを記録することができるようになってきたそうです。

 文字を書くことが苦手な子でも,キーボードや音声入力を使って表現できるようになったことで記述量も増え,気付きだけではなく思いや願いも表現されるようになったそうです。個別最適な学習環境が,子どもの学びを豊かにしていることが実感できる実践でした。

3.実践発表

テーマ:「ブッククラブをしよう 〜リーディング・ワークショップ〜」

講 師:今村 俊輔 先生(横浜市立茅ケ崎台小学校 主幹教諭)

 今村先生は,横浜市立小学校に勤務するとともに,D-Project関東スプラウトで代表を務め,日々授業研究,授業改善に意欲的に取り組まれています。今回は,これまで実践されてきた国語科の学習に加えて,GIGA端末を自然と取り入れた「リーディングワークショップ」の実践も紹介していただきました。

自分の葛藤

 今村先生は,日々の国語の授業を振り返り,ふと気付きました。読書を通じて豊かな子ども時代を過ごしてほしいという願いを持っているのに,それが果たして子どもに伝わっていないのではないかと。読書をしないというお家の人からの相談,目的がないと読書をしない子ども。もっと楽しさを味わい,日常生活を豊かにしてほしいという思いで,リーディング・ワークショップを国語科授業に取り入れたそうです。

ブッククラブについて

 国語科の読むことの指導事項に基づき,登場人物の相互関係や心情を読み取り,人物像や物語の全体像を具体的に想像したり,意見や感想を共有して自分の考えを広げたりすることをねらいにしています。

 単元は8時間です。まず,選書をして計画を立てます。決められた範囲を読んでノートにまとめ,その部分についてブッククラブを行います。ブッククラブを数回行った後,全体を振り返って友達にブックレターを送ります。○ 優れた読書家の技法

 ブッククラブを充実したものにするために大切にしているのが,優れた読書家の技法です。今村先生が実践の中で取り上げていたのが次の6つです。

・思い直す

・整理する

・質問する

・つなげる

・解釈する

・何が大切かを見極める

 読書をしながら,これらの技法を手がかりに,読書ノートに記録をしていきます。繰り返し活動していきますので,バランス良く3つ選び,それぞれにつき3行70字以上を目安に記述していきます。

 ブッククラブでは,この読書ノートに書かれた内容を基に,順番に話していくのです。

 当日の発表では,読書ノートを基に子どもたちが話し合う様子が紹介されました。そこでは,友達の発言に対して,文章中に繋がりや考えの根拠を見つけて出し合い,場面の理解を深めていく様子が見られました。

成果と課題

 活動後,子どもたちに取ったアンケートからは,

物事を深く考えられるようになった。

本が少しずつ好きになった。

読んだ感想を自然と言えるようになり,そこから深い問いを出せるようになった。

自分の成長を実感する声がたくさん聞かれました。

 今村先生は課題として,

子どもたちに選書を任せているために本の理解が難しい子がいること。

メンバー間での活動に対する温度差があること。

優れた読書家の技法の偏り。

の3点を挙げていました。個別にフォローしたり,ミニレッスンや例示をしたりすることで,さらに充実した活動になるように指導しているそうです。

電子書籍を使ったブッククラブ

 電子書籍読み放題サービス「Yomookka」を使ったブッククラブについても紹介していただきました。「Yomokka」は,ポプラ社のノンフィクションシリーズから,グループごとに選書して活動したそうです。

 電子書籍を使ったブッククラブでは,コメント欄を活用して感想共有したり,読書ノート代わりにロイロノート・スクールのYチャートを使ったりしました。子どもたちの話し合いは,電子書籍でも本でもほとんど変わらなかったそうです。さらに,読書ノートの共有が便利なり,書籍管理もほとんど手間要らず,さらに,同じ本をクラス全員が読むこともできます。

 予算の関係で,現在は利用していないそうです。

ブレイクアウトセッション

ルームA 
教科書の取り扱いについて話題になりました。教科書通りではない授業方法に対する他の先生方との調整の難しさについて,教科によっては教科書をほとんど使っていないことがあるのは大丈夫なのかといったことが話し合われました。

(補足)教科書は,学校教育法において「文部科学史大臣の検定を経た教科用図書又は文部科学省が著作の名義を有する教科用図書を使用しなければならない」と定められています。一方,その活用については,教師が創意工夫して,子どもの学習状況に応じた取り組みが必要であると考えられます。

ルームB
読むことの指導について,学力の差をどのようにしていくかが話題になった。子どもに読ませるから,子どもが読みたいという気持ちになる指導が大切だという話にまとまった。 

ルームC 
子どもが主体的に話し合いができることにとても感激した。教師がどのように仕掛けることで,このように話し合いができるようになるのか疑問に思った。(今村先生)優れた読書家の技法を繰り返し使っている。国語に限らず,理科でも他の教科でも活用していくこと。ブッククラブの方法で,順番にみんなが話をする,アウトプット量を均一にしていく指導によって,できるようになっていきました。

ルームD
途中まで読んでから,話をすることが面白いと思った。苦手な子でも取り組みやすく,それが続きを読むモチベーションになっていた。国語の授業を見直すことになった。電子書籍について活用した先生がいて,普段手に取らない本に出会ったり,図鑑などがアップデートされたりする良さがありました。 

まとめにかえて

リーディング・ワークショップ」(ルーシー・カルキンズ著,新評論)は,子どもが友達と関わりながら本を読み,その意味を自ら構築する方法を指南する本。本の内容を友達に報告する中で,友達の反応や反論を受けて,自らがその本の意味を作り上げていくエピソードが記されています。

リーディング・ワークショップに関連して,リテラチャー・サークル(Literature Circles)の実践を参観したことがあります。読みの視点を分担することで,多面的な読みをしていくことができる取り組みです。

今村先生のご実践では,対話を通じて意味を作り上げていくこと,その土台には,子ども同士の仲間づくりの側面や学習の調整の側面として,「優れた読書家の技法」「ブッククラブの方法」などの指導が大きく関わっていたことが,この実践の肝になっていたところでした。(後藤)

※この記事は、メデイア教育研究会代表 後藤大ニ郎さん(佐賀大学大学院 准教授)の投稿です。

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