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2022年度 第4回メディア教育研究会「関東・九州実践交流会 〜子どもと学びをつなぐヒト・モノ・コト」報告

プログラムの概要

日 時:2022年11月19日(土)14:00〜16:45

場 所:オンライン開催

テーマ:「子どもと学びをつなぐヒト・モノ・コト」

報 告

1.開会・事務局ミニ実践提案

 参加者へのお礼と今回の交流会について紹介がありました。

 事務局ミニ実践提案は,神大寺小学校の山口先生が「4年国語『新聞を作ろう』の発表をしました。ロイロノート・スクールの共有ノート機能を活用したグループによる新聞作成の実践でした。文面だけではなく写真の構図にも気をつけて記事を作成していたことなどが紹介されました。修正や構成の変更のしやすさだけでなく,思考ツールを使って分担をはっきりさせるなど,アプリの良さをつかった活動の姿が見られたそうです。作成にあたっては,先生が子どもに問い返すことで作品をブラッシュアップするように促したり,支援が必要な場面では寄り添いながら協働的に活動できるようにしたりしていたとお話がありました。さらに,著作権の指導についての話題にもなりました。

2.分科会

<中・高校分科会>

佐賀大学教職大学院 大串 平 先生(中学校第2学年社会科)
「東京に住んでいる人に九州地方の魅力を知ってもらおう-拡張的学習の理論の道具に着目して-」

 大串先生は佐賀大学教職大学院の学生で,実習の成果を発表してくださいました。主体的な学びの実現を目指した中学校社会科第2学年の九州地方の学習です。パフォーマンス課題として,「東京に住んでいる人に九州地方(おすすめの県)について深く知ってもらえる,旅行したいと思わせる魅力とは何か?」という問いを立てて,授業実践を行いました。

 子どもが自らの問いを達成するために必要な情報を収集していきます。実習校では『学び合い』の実践をしており,友達と協力しながら学習を進めていく様子が多く見られました。そこでは,学習すべき内容をきちんと捉え,学習することができ,どの子もパフォーマンス課題を達成していました。一方で,自らの問いを解決できたかという点については,不十分なところがあったそうです。具体的には,資料が十分足りずに初めに自分で立てた問いが達成できないことから対象を変えて課題に取り組んだ子どもがいたそうです。また,授業をする上で,特に学力低位層の生徒への働きかけについて,悩んだそうです。

会場からは,そのような生徒に対しては「興味を持ってもらう,自信を持ってもらう,楽しくなってもらう」などの工夫が有効であることが出されました。また,「学び方を学ぶ」という視点から,パフォーマンス課題とルーブリックを活用した授業デザインがよかったという意見がありました。

 佐賀大学教職大学院・佐賀県立唐津西高等学校 山口 崇 先生(高等学校第3学年社会科地歴総合)
「持続可能な地域づくりを目指して 『地域の防災・減災』―拡張的学習に着目したGISと防災教育の実践を通して―」

山口先生も佐賀大学教職大学院の学生ですが,高等学校の現職の先生でもあります。現任校での3年社会科地歴総合の事例として,防災・減災についての実践について,発表していただきました。地域の課題を発見し解決していく学習活動についてPBLを取り入れてデザインし,市役所などと連携して授業実践を行いました。その結果,今まで知らなかったことに目を向けていき,自らの生き方を考えたり別地域との比較を通じて視野を広げたりすることができたそうです。

学習を通じて学んだことが学習以外に拡張したのか,考えていたことと現実にギャップ(矛盾)が生じていたか,それを克服したかといった視点で分析しました。それによって,子どもによって5つのタイプが見られたものの,学習全体としては地域課題の解決に繋がる地域貢献へと学習が拡張していることが明らかになりました。

西東京市立田無第二中学校 片山 亮志 先生(中学校第2学年数学科)
「平行と合同」

 片山先生からは,一人一台端末を活用した新たな学びの提案として,西東京市の中学校の事例を発表していただきました。市の研究指定を受けて「情報活用能力の育成」について研究を進めています。学校で設定した情報活用能力の育成に向けて,授業のDX(デジタルトランスフォーメーション)を行い,研究をしています。なお2023年1月31日に研究発表を行うそうです。

 事例は,第2学年数学科「並行と合同」です。様々な用語図形の特徴など,多くのことを学ぶ単元です。解法も多く,多様な考えが出やすい特徴があります。授業では「個別最適な学び」として,「e-ライブラリ」を活用して自分の学習状況に合わせた問題に取り組みます。考えを表現する際にも,生徒がデジタル教科書などを活用して,作図していきます。このようにして,生徒一人一人が考えを持ったところで,それを持ち寄り,解法を共有,一般化して,スライドにまとめていきます。さらに学級で共有していくのです。ここまでできたら,振り返りを行います。

 日頃から端末を使うことで,文具としてタブレットを使うことができ,効果適期な学びになっていったそうです。発表を聞いて,個別最適な学びと協働的な学びの往還によって,学びたいときに学び,教わりたいときに教えてもらえる環境が出来上がっているのだと感じました。

<小学校分科会>

神奈川県横浜市立白根小学校 宮崎 憲太 先生(小学校第4学年算数科)
「どっちが広い?4年生が掃除する面積を明らかにしよう」

宮崎先生は,小学校第4学年,不定形な面積を求める学習の実践発表でした。学習をするにあたって数感覚を養っていきたいという教師の思いがあり,掃除する面積に着目して,どちらがどれだけ広いのか考えるという課題を立てたそうです。子どもの日常から単元設計をされているところの素晴らしさが際立っていました。掃除場所であれば,子どもたちは実際に測って面積を求めることができます。算数的な活動は実生活や社会とのつながりが求められます。それに沿った提案でした。

熊本県小国町立小国小学校 甲斐 昌平 先生
「6年生 教科横断でのタブレット活用」

 今回は授業構想の段階を紹介していただきました。第6学年理科「土地のつくりと変化」についてアウトプットを大切にした授業を構想されていました。ロイロノートによるワークシート,それをPadletで交流します。作成したレポートを相互評価するためにCanvaやロイロノートを活用し,単元のまとめではKahoot !でクイズ作成を計画しています。また,毎時間Formsで振り返りを行っていく予定です。

発表では,このように様々なアプリを紹介していただきました。「使い倒すことで選択できる」という言葉が会場からは上がったそうです。

 質の高いアウトプットのためには,自律的に学びとることが不可欠です。時間・見通し・計画・情報をどれだけ学習者に委ねることができるかということが,これからの授業のポイントになりそうです。

熊本県小国町立小国小学校 島田 翔太 先生(小学校第4学年社会科)
「自然災害からくらしを守る『地震からくらしを守る』」

小国小学校は,学習環境も大変素晴らしいところです。壁一面がホワイトボードの学習室,机は5角形になっていて机を寄せるのも容易です。タブレット,電子黒板,ドローンなどを駆使した学習活動を行っていました。

充実した学習活動ができていたのは,しっかりとした単元構想があったからです。自分の将来を見つめる学習とリンクさせて,防災についても「今,自分にできること」だけでなく,「将来,自分にできること」も考える単元として,防災についての単元デザインが行われていました。地に足がついた実践となるために,ヒト・モノ・コトをつなげた実践でした。

まとめにかえて(後藤)

 「よい教育とは何か」というものを探っていくためには,「これがよい教育である」と考える実践を持ち寄り,確認し合う営みを続けていくことが大切です。今回は,関東・九州実践交流会を行うことで,どの地域でも子どもが主体になる授業に取り組んでいることがわかりました。今後も継続して,このように実践を紹介し合う機会を設けていきたいと考えています。

事務連絡

 次回は令和5年1月21日(土)14:00〜 横浜市立神大寺小学校を会場にD-Project関東Sprout,デジタル教科書学会とのコラボ研を実施します。

■■■横浜メディア教育研究会 Since 2008■■■

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顧問:中川一史、北見俊則
代表:後藤大二郎
実行委員:佐藤幸江、鈴木輝美、小林祈、中島鑑、山口晃史、ほか
サポーター:野崎隆志、千葉教生メール:med-jim@googlegroups.com

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