概 要
日 時:2023年3月10日(金)19:00〜20:30
場 所:オンライン開催
テーマ:「ICTを活用した授業の実践」
発表者 : 宝仙学園小学校 吉金 佳能 先生
報 告
1.開会・事務局ミニ実践提案
事務局ミニ提案では,鈴木先生から小学校第3学年総合的な学習の時間「大好き深谷のまち」の実践提案がありました。
町のよさや困ることを地域の人に聞きたいと考えました。住宅街にある学校のため昼間に出歩く人が少なく,直接聞くことができません。そこで,ウェブアンケートを作りました。QRコードから回答できるポスターを作成,掲示しました。作成にあたってはロイロノートをフル活用して進めました。
現在は,アンケートは100件ほどの回答を得て,算数の学習と関連づけて資料の整理をしているところだそうです。
2.吉金先生 実践報告
吉金先生の勤務校は中野区にある私立宝仙学園小学校です。子どもがプロジェクションマッピングをして校舎を飾ったり,ドレスマッピング(ドレス型のスクリーンを使ってファッションショーを行う)などICTを活用した実践も多く行っている学校です。吉金先生は理科専科をしています。「教育は人間づくりでありその一環としての理科教育」「Learning by doing」を信条として教育活動を行っているそうです。
ICTの強みは実体験を最大化できることです。
- 実体験の質を高める,
- 実体験の量を増やす,
- 実体験を拡張する,
- 実体験を豊かにする
という効果です。
実体験を豊かにする実践として,「発見ポスト」があります。発見したことを自由に共有するオンライン掲示板です。GWには,マッピングを使って,どこでどんなことを発見したのかコメントし合う活動をしました。これは,単なる情報の共有ではなく,体験を共有しているわけです。 これからの時代は,情報の共有ではなく体験の共有が重要だと考えています。子ども一人一人がさまざまな体験をしています。例えば,見つけた雲を集約することで「ものすごい雲の図鑑」ができあがります。雲形という情報を共有するだけでなく「彩雲を見つけた」という体験もシェアできるのです。
そのほかに,クラスで100のチャレンジをするプロジェクトを行いました。夏休み前に理科に関する「畑に行ったよ」「蜂の巣発見」「昆虫標本を作る」「可愛いカエルを見つける」など100の体験を考え,スプレッドシートで共有しました。体験をしたらそこに書き込みをするとともに,証拠写真を撮っていきます。子どもたちは夏休み中毎日チェックして,楽しみにしていたそうです。そこでは,時間的,空間的に離れていても,体験の連鎖が起こり,次から次へと書き込みが増えていったそうです。
では,授業場面では,どうでしょうか。実験データで協働することを意識しています。そこで,吉金先生は一つ実践を紹介してくださいました。
「水と食塩水を見分ける方法は?」
です。吉金先生は日頃から,
「問い」
「活動」
「アウトプット」
「評価」
の4点を軸に授業デザインを行っているそうです。「水と食塩水を見分ける方法は?」の実践では一人1説で30秒動画にまとめることにしました。条件として,科学的であること,最初の説はNGということです。
理科では,仮説を立てた後に実験することが大切だと言われていますが,小学生段階においては,実験や観察を通して,仮説を導いていく力も大切だと考えているようです。そうした実体験をベースにした学びを通して,学習者が自己選択し自己決定していく「探究的な学び」を実践されています。
その工夫の一つにICTを活用したアウトプットがあります。
デジタルポスター
デジタル図鑑
プレゼンテーション
プログラミング
レポート
などICTによって表現の幅が大きく広がったと感じています。
そのほかにも,子どもの気づきや知っていることを元に,「当たり前を疑う」ことから授業を作りました。磁石の単元では,子どもたちがいろんな方向から考えて一人1実験をしていきました。ICT活用のゴールは学習者中心の学びであると考えています。
吉金先生から,以上のご発表をいただいた後,ブレイクアウトルームに分かれて話し合いました。とてもよい学習ができているという感想や,知識の部分はeラーニングを使って補充しているという吉金先生からの補足情報,さらに,体験・経験を元にした授業づくりの難しさなどについて議論されていたそうです。
3.代表コメント
吉金先生の授業デザインには,「相手意識」「目的意識」を持って取り組めているところ,制限を設ける,環境を設定するデザインの素晴らしさがありました。 授業デザインの6つの構成要素の中心にあるのが「ねがい」です。文科省や内閣府でも子ども主体の学び,コーチングを目指していく学びを目指すべきという議論が重ねられています。それは,まさに子どもによる探究的な学びの姿を理想としているわけです。
探究においては,学習者自らが問題を発見していくことが肝要になってきます。さらに学習を進めるにあたっては,拡散的な思考と収束的な思考を繰り返しながら活動していきます。試行錯誤する際には時間も多く必要になってくることもあります。だから敬遠されてきたところがありますが,ICTを活用できる今こそ,学びの手綱を子どもへと託した学びができればと考えています。
事務局連絡
次年度は,改めてお知らせします。