文部科学省が全国の小中学生を対象に「家庭の蔵書数」を初めて調査したところ、25冊以下が3割を占めた一方、蔵書数が多いほうが全国学力・学習状況テストの正答率が高くなる傾向が分かりました。
全国学状で初の読書調査を実施
文部科学省は毎年、全国の小学6年生と中学3年生を対象に「全国学力・学習状況調査(全国学状)」と、その付帯調査を行っています。その付帯調査で、「家庭の経済的、文化的な資本」として国際的な調査でも用いられる「家庭の蔵書数」を初めて調べました。
25冊以下が30%以上、100冊以上が35%以上と大きな差
その結果、家にある本の数には大きな差があることが分かりました。
家にある本の数(冊) | 小学校 | 中学校 |
0〜10 | 11% | 14% |
11〜25 | 19% | 20% |
26〜100 | 34% | 32% |
101〜500 | 32% | 30% |
500以上 | 5% | 5% |
25冊以下と答えた子どもが小中学校とも30%を占める反面、100冊を超える子どもは35%を超えています。
正答率は蔵書数が多い方が高い
学力テストの正答率をみると、小学校の算数では、蔵書数が最も多い子と最も少ない子では18ポイントの差があり、
中学校の国語でも15ポイント差が開くなど、蔵書数が多いほうが正答率が高くなる傾向が見られました。
この結果について、教育社会学者の早稲田大学の松岡亮二准教授は次のように述べています。
国の大規模な調査で家庭環境により学力に差がある事態が示された意味は大きく、困難を抱えている子どもの実態を踏まえ政策を議論してほしい。
慎重な分析が必要
例えば「塩分を多く摂る人に高血圧が多い」からと言って、「高血圧の人は塩分を多く摂る」とは限りません。
同様に、この調査からは「家庭での蔵書が多い子どもは全国学状の点数が高い傾向がある」ことが分かりましたが、このことから「本が多いと学力が高い」と結びつけてることについては、慎重になるべきでしょう。
- 蔵書が多いと点数が高いからといって、点数が高いから蔵書が多いとは限らない
- 蔵書の数と蔵書の種類(物語、図鑑、マンガなど)、蔵書の数と読書数の関連が分からない
- 全国学状の点数と学校でのテストや成績が一致するとは限らない
これらの相関関係と分析ができて初めて「蔵書が多いと学力も高い」と言えるのではないでしょうか。
参考
国立教育政策研究所「令和3年度全国学力・学習状況調査の調査問題・正答例・解説資料について」
2021年9月5日 NHK NEWS WEB「家に本が多いほうがテストの正答率高い? 文科省調査」
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