最近、相次いで「学習指導要領の共通コード化」のニュースが相次ぎ報道されました。
しかし、このニュースではコード化とは何か、コード化の何が重要なのかについて読み取ることが難しいと思われます。
そこでこの記事では、学習指要領のコード化の意義と重要性について解説していきます。
学習指導要領コード化の背景
文部科学省は2020年10月16日、学校教育でのICT活用を支える「データの標準化」の第一歩として、学習指導要領の内容や単元に共通コードを割り振る「学習指導要領コード」を設定し、「教育データ標準」(第1版)としてホームページ上で公開しました。
この方針は、「教育データの利活用に関する有識者会議(座長:堀田 龍也 東北大学大学院情報科学研究科教授」で話し合われたことを元に「学習指導要領のコード化(案)」が出され、文部科学省のホームページに公開されました。エクセルデータが誰でもダウンロードできます。
このコードは、学習指導要領の全ての項目を対象に、告示時期、学校種別、教科、学年、内容、評価基準などの分類に応じて、機械的に16桁の数字を割り振ったものです。
これまで、これらの分類項目は教科書会社や教材会社が各自に設定していました。このコードは、それを統一して活用しようというものです。
コード化のメリット
コードを共通化すると、どのようなメリットがあるのでしょうか。
GIGAスクールが実現し1人1台端末になると、個々の学習履歴がビックデータとして蓄積され、ビックデータと個々のデータが対象化され、今まで以上に体系的に分析できる余地がでてきます。
そうすると今まで個人の感覚や経験に頼りがちだった児童生徒理解や指導、評価が、より体系的・客観的、具体的に行うことができるようになります。
その際、その基礎となるデータのコードが標準化されていないと、データを体系的に処理・分析することが難しくなります。
そのため、教育データの利活用では、
- 学習指導要領の求める資質・能力を育成するため、どのようにデジタル機器を利活用するのが効果的か実証的な検証例が少なく評価できない。
- データが機関や事業者ごとに異なり、膨大なデータを収集してもデータの受け渡し(データ・ポータビリティ)が確保されず正確な比較参照ができず、教育の質向上に活用できない。
- セキュリティ確保やプライバシー保護に重点を置きすぎ、データの利活用が進まない。
といった課題が指摘されてきました。教育データの標準化で、これらの課題を解決していくことを目指します。
具体的には
①教科書・教材等の連携
学習指導要領をキーにして、各民間事業者のデジタル教科書・教材ツール・学習ツールや、博物館のデジタルアーカイブを関連付けする
②教材等のデータベース化
国や教育委員会・研修センター等で作成した各種手引き・副教材・研修教材・指導案例等に学習指導要領コードを付与し、学習指導要領の該当箇所をクリックすれば、関係する資料が一覧的に表示できる。
といったような活用方法が想定されます。
このことにより、
- デジタル教科書・教材の参照履歴
- 協働学習における発話回数・内容
- デジタルドリルの正誤・解答時間・試行回数
などの学習履歴データを分析、活用して指導や支援に生かすことができるようになるのです。
今後のコード化の推移
今後は公務データ
- 子供の属性情報(氏名、生年月日、性別など)
- 学習評価データ(定期テストの結果、評定など)
- 行動記録データ(出欠・遅刻・早退、保健室利用状況など)
- 保健データ(健康診断の結果など)
なども共通コード化する予定です。
教育データの標準化によりデータの活用が促進され、教育に携わる様々な団体、企業、研究機関に活用されるようになるでしょう。
学習指導要領のコード化は、教育データの標準化の第一歩になるのです。
そして今まで個々の経験に頼りがちだった教育指導にエビデンスを求めることができるようになるでしょう。
参考
文部科学省「教育データの標準化について」
文部科学省「学習指導要領のコード化(案)」
2020年7月16日 NikkeiBP 教育とICT Online「学校現場のデータ標準化と学習指導要領へのコード付与」