GLOCOM(国際大学)主任研究員の豊福晋平先生は、ここ数年、GIGAスクールやICT文具論についての発信で、とても注目を集めています。
豊福先生は、GIGAスクール構想が成功する秘訣について、twitterで「GIGAスクールの鉄則」という発信をしています。全国の先生に読んでいただきたいと思い、当サイトでもまとめさせていただきます。
今回は第三弾、41〜60です。
GIGAスクールの鉄則41〜60
GIGAスクール導入の鉄則41
“突然の休校・オンライン対応に備える”
端末配備済みの学校は①ID/パスワードログインの習熟 ②持ち帰りと家庭ネット接続 ③情報ライフライン(リモート会議や校内SNS)の練習を、いますぐやっておくべき。重要なのは授業ではなく関係を維持すること。
GIGAスクール導入の鉄則42
“学習者中心に必要なのは信頼と自律”
統制か放任かの0/1では、子どもは糸の切れた凧になってしまう。子どもの勘(気持ちのよりどころ)を育て、信頼し、徐々にコントロールを手渡す丁寧なプロセスが大事。
GIGAスクール導入の鉄則43
“大人側の学習棄却(unlearning)がカギ”
教育情報化で統制型が失敗するのは、古い常識の再生産がミスマッチを起こすから。むしろ、新しいモデルは子どもの自然な振る舞いにあり、大人がそれを学ばねばならない。だから、子どもに委ね、探索を促すことが必要。
GIGAスクール導入の鉄則44
”不毛なノコギリ刃実践を根絶する”
個人格差が大きすぎて、中高大と進学のたびにICT基礎スキル教育をリセットせざるを得ないのが日本の現状。これでは高度な活用スキルは積み上がらない。
GIGAスクール導入の鉄則45
”コロナ休校対策=オンライン学習(授業の再現)ではない”
本来なら①情報ライフライン確保 ②メンタルケア ③個別学習可能な課題、がセット。授業配信は情緒的安定にはつながるけど、教室と同程度の学習効果があるとは限らないし、画面を見続ける時間拘束はキツい。
GIGAスクールの鉄則46
“子どもに道具立てをゆだねよ”
全員が同時に同様の方法でタスクをこなすような与え方をすると、その子特有の不都合があっても逃れられない。手書きかデジタルか、どんなアプリを使うのか、子ども自身がTPOに応じて道具選択し、ふりかえる余地を意識する。
GIGAスクールの鉄則47
”3年で成果を出さないと後はない”
GIGAスクールは起爆剤。3~5年後更新期は現状では保護者購入しか選択肢がない。学校日常のデジタル化が定着して端末利用が当たり前にならないと、保護者は絶対同意しないだろう。
GIGAスクールの鉄則48
“手順を教えるより一緒に楽しんだ方が勝ち”
一方的に教えようとするほど、教える側の負担は増え、学ぶ側の意欲は失われ、手順通りにしか使えなくなる。むしろ、子どもとあれこれ試行錯誤してハックした結果を共有した方が楽しいしスキル習得も早い。
GIGAスクールの鉄則49
“やってもやらなくても記録は全部残る”
GIGAスクールの特徴のひとつはクラウド活用。オンライン・クラウド上の活動にはすべて「デジタル足跡」が残る。各学校を実査しなくても、状況は簡単に把握出来ます。
GIGAスクールの鉄則50
“子どもも大人もデジタルジレンマを抱えている”
魅惑的なデジタルメディアの選択と生活とのバランスをどうするか。大人も子どもも直面する課題は同じ。同じ目線で共感し考えることが肝要。
GIGAスクールの鉄則51
“公的連絡に私的手段を使ってはいけない”
私的手段の代表がLINE。学校連絡は学校公式IDと情報ライフライン(メール・メッセンジャ・校内SNS)が大前提。
GIGAスクールの鉄則52
“ゴールが以前と同じならICT効果は出ない”
ICTの主効果は圧倒的な情報効率。例えば、東京~品川間の移動にわざわざ新幹線を使う奴はいない。ある程度持続的に使って名古屋や大阪へ行くことを考えよう。
GIGAスクールの鉄則53
”学校に聖域を作らない”
子どもの日常生活と学びは不可分。ふだん使いのICTやオンライン・コミュニケーションを排除した学習の強要は子どもにとってむしろ不自然でナンセンス。一番の被害を被るのは子ども。
GIGAスクールの鉄則54
”授業で使えるか、より、子どもの道具になり得るか”
の方が大事。授業支援システムは学校授業限定。汎用のクラウドツールなら個人デバイスでも活用出来る。どちらが教育的配慮か?
GIGAスクールの鉄則55
“ビッグピクチャ(俯瞰図)を意識する”
ICTは授業の小道具ではなく学校日常を変えるもの。19世紀の公教育の常識をこんにちの情報社会に合わせて刷新するもの。学び方も変われば、教員の立ち位置も学校経営も変わる。
GIGAスクールの鉄則56
“たとえ親子でもID共有させるのはダメ絶対”
理由はセキュリティとプライバシーの大原則を崩すから。IDのザル運用は重大事案の温床。保護者を校内SNSに参加させたいなら、保護者個別にIDを配るのは当然。
GIGAスクールの鉄則57
“ICT管理統制派は保護者を共犯にする”
子どものネット依存や健康被害で保護者不安を煽る。しかし、学校には子どもを24時間監視従属させる余力はない。満たされるのは虚しい支配欲だけだ。
GIGAスクールの鉄則58
”ゴミか作品か”
自分を大切に出来る、ということは、自分の経験や生み出したモノも大切に出来るということ。子どもの戯れから自然に生み出されたものを見取り、価値づけ、残しておくのは、最初は周囲の大人の役割。
GIGAスクールの鉄則59
”後回しにされたGIGA経験は二度と取り戻せない”
発達期の子どもにとって、その時にしか得られない経験は貴重なものだ。誰かの都合で奪われてよいものではない。
GIGAスクールの鉄則60
”子どもは内容以上に巧みな使い方に注目する”
理由は自分も同じ事をやってみたいから。学習者側目線で魅力的な方法を繰り返し見せれば拡散普及は早い。
豊福晋平先生
国際大学グローバル・コミュニケーション・センター(GLOCOM)主幹研究員・准教授
北海道出身、横浜国立大学教育学部(心理学)卒、横浜国立大学大学院教育学研究科修了、東京工業大学大学院総合理工学研究科博士課程中退
専門は学校教育心理学・教育工学・学校経営。一貫して教育情報化をテーマとして取り組み、近年は、北欧諸国をモデルとした学習情報環境(1:1/BYOD)の構築に関わる。
関連記事
ICT文具論 豊福晋平先生インタビュー( EDIPEDIAとのコラボ)
日本の子どもがスマホ・ネット・ゲーム依存は本当?
プログラミング教育は最初が肝心
GIGAスクール構想とは?
最近のコメント