文部科学省は、「令和2年度 学校における教育の情報化の実態等に関する調査結果(概要)」を、9月13日付で公表しました。
この調査は、初等中等教育における教育の情報化の実態を把握し、関連施策の推進を図るために同省が毎年実施しているもので、調査の基準日は毎年3月1日としています。
調査対象は、全国の公立学校(小学校、中学校、義務教育学校、高校など)と、公立学校で授業を担当している全教員です。
調査内容は、次のようになっています。
- 学校におけるICT環境の整備状況等
- 教員のICT活用指導力
学校におけるICT環境の整備状況等
「学校におけるICT環境の整備状況」では、次の7項目の調査をしています。
- 教育用コンピュータ1台当たりの児童生徒数
- 普通教室の無線LAN整備率
- インターネット接続率
- 普通教室の大型提示装置整備率
- 教員の校務用コンピュータ整備率
- 統合型校務支援システム整備率
- 指導者用・学習者用デジタル教科書整備率
調査結果の概要は、以下のようになってます。
項 目 | 2020年3月 | 2021年3月 |
教育用コンピュータ1台当たりの児童生徒数 | 4.9人/台 | 1.4人/台 |
普通教室の無線LAN整備率 | 48.9% | 78.2% |
インターネット接続率 | 96.6% | 98.2% |
普通教室の大型定提示装置整備率 | 60.0% | 70.3% |
教員の公務用コンピュータ整備率 | 122.8% | 122.5% |
統合型公務支援システム整備率 | 64.8% | 72.3% |
学習者用デジタル教科書整備率 | 56.7% | 67.3% |
指導者用デジタル教科書整備率 | 7.9% | 6.3% |
1台当たりの児童生徒数は4.9人から1.4人に
普通教室の無線LAN整備率は48.9%から78.2%に
と、1年間で大幅な向上が見られます。この結果からも、昨年度のGIGAスクール構想の実現に向けた取組みの成果が現れていることが分かります。
(3月末時点では、96%以上の公立小中学校で1人1台が実現しています。)
教員のICT活用指導力の状況
「教員のICT活用指導力の状況」は、大項目が4、それがそれぞれ4の小項目に分かれる、全16項目の調査になっています。
- A 教材研究・指導の準備・評価・校務などにICTを活用する能力
- B 授業にICTを活用して指導する能力
- C 児童生徒のICT活用を指導する能力
- D 情報活用の基盤となる知識や態度について指導する能力
調査結果の概要は、以下のようになっています。
項 目 | 2020年3月 | 2021年3月 |
A 教材研究・指導の準備・評価・校務などにICTを活用する能力 | 86.7% | 86.3% |
B 授業にICTを活用して指導する能力 | 69.8% | 70.2% |
C 児童生徒のICT活用を指導する能力 | 71.3% | 72.9% |
D 情報活用の基盤となる知識や態度について指導する能力 | 81.8% | 83.3% |
この結果から、
調査結果はほぼ前年度と変わらず
教師が活用する項目のポイントは高い
授業や指導に関する項目のポイントが低い
ことが分かります。
70%を下回っている項目は、
B2 コンピュータや提示装置などを活用して児童生徒の意見などを効果的に提示する。
B3 知識の定着や技能の習熟をねらいとして,学習用ソフトウェアなどを活用して,繰り返し学習する 課題や児童生徒一人一人の理解・習熟の程度に応じた課題などに取り組ませる。
B4 グループで話し合って考えをまとめたり,協働してレポート・資料・作品などを制作したりするな どの学習の際に,コンピュータやソフトウェアなどを効果的に活用させる。
C3 児童生徒がワープロソフト・表計算ソフト・プレゼンテーションソフトなどを活用して,調べたこ とや自分の考えを整理したり,文章・表・グラフ・図などに分かりやすくまとめたりすることができるように指導する。
C4 児童生徒が互いの考えを交換し共有して話合いなどができるように,コンピュータやソフトウェア などを活用することを指導する。
です。
特に話し合ったり協働的に学んだりすることに関する項目B4とC4が著しく低く(62.3%と61.2%)、
B3とB4に関しては昨年度より下がっています。
GIGAスクール構想の実現により、機器の整備やインターネット環境に著しい向上があったにも関わらず、指導者の資質が変わっていないことが問題です。
研修の受講状況
それでは、教員の質の向上をための、研修の実施状況はどうなっているでしょうか。
ICT活用指導力に関する研修を受講した教員の割合は次のようになっています。
年度 | 全国平均 | 最高 | 最低 |
2021(令和2)年度 | 63.9% | 97.1%(熊本県) | 35.6%(岩手県) |
2020(令和1)年度 | 50.1% | 92.3%(大分県) | 23.6%(岩手県) |
研修の受講者は増えているが、都道府県による差が大きい
ことが分かります。
まとめ
GIGAスクール構想により、機器の整備とインターネット環境は劇的に改善された
教員のICTを活用して指導する能力が引き続き課題
教職員研修は、都道府県による差が大きい
参考:文部科学省「令和2年度学校における教育の情報化の実態等に関する調査結果(概要)」
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