感覚的にも自分の経験的にも、教員も教育委員会も、ほとんどが教員免許更新制度について反対という感覚でした。
このことについて、朝日新聞が全国の教育委員会にアンケートを取ったところ、8割の教委が「廃止」または「見直し」を希望していることが分かりました。
2009年から続く教員免許更新制について、朝日新聞が教員の任命権を持つ67教育委員会にアンケートしたところ、53教委(79%)が「見直しが必要」と回答した。更新のための講習が長時間労働に苦しむ教員の負担になっているなどとして、このうち7割が講習免除対象の拡大といった制度の緩和を求めた。
2021年5月29日 朝日新聞デジタル「教委の8割、免許更新『見直しを』 教員確保のネックに」
47都道府県と20政令指定市の教委に聞いたところ、「見直し」を選んだ53教委以外では、「現行のままでよい」としたのは5教委にとどまり、9教委は「その他」を選び、「国の動向を注視している」などと答えた。
逆に「現行のままでよい」と答えている教委が5教委もあることが信じられません。これらの教委は
- 教員不足になっていない
- 教員も管理職も教委も更新講習や手付きが負担にならない秘策を持っている
- 国の政策について無条件に従う
- 教育委員会が実施している研修が充実していない
のいずれかなのでしょうか
受講期間の弾力化や免除の拡充なと、緩和を希望
見直しの内容についてですが、
53教委のうち39教委が「講習の受講期間を弾力化、免除を拡充するなど緩和する必要がある」を選択。夏休みなどに30時間行われる講習について、「多忙で受講が困難」(埼玉県)、「市の研修と講習内容が重複している」(浜松市)などの指摘があった。「(受講忘れによる)『うっかり失効』で即失職は重すぎ」との指摘もあった。「廃止するべき」は1教委だった。
2021年5月29日 朝日新聞デジタル「教委の8割、免許更新『見直しを』 教員確保のネックに」
このアンケートからも、教員免許更新制度が、臨任・非常勤講師を確保することのネックになっていることがわかります。フリーランス教師として働くことのネックにもなっているということです。
更新制の課題について複数回答で聞くと、「教員経験があり教職についていない人を臨時任用する際、失効ですぐに任用できないケースがある」が53教委と最も多かった。例えば教員経験者に臨時で講師を依頼しても、更新講習が未受講ですぐに教壇に立てない、といった指摘だ。「代替者の確保が一層困難」(山形県)といい、教員のなり手不足に制度が拍車をかけている形だ。
2021年5月29日 朝日新聞デジタル「教委の8割、免許更新『見直しを』 教員確保のネックに」
メリットは「最新の知識が得られる」
更新制のメリットは、複数回答で「定期的に最新の知識が得られる」(52教委)が最多。「自主的な研修の受講が少ない教員にとっても学びの機会になる」(26教委)が続いた。
2021年5月29日 朝日新聞デジタル「教委の8割、免許更新『見直しを』 教員確保のネックに」
教育公務員特例法21条に「教育公務員は、その職責を遂行するために、絶えず研究と修養に努めなければならない。」とあります。だからこそ本来、「時間外勤務を命じることができない」ことになっているのです。
しかし、時間外勤務を命じない→時間外勤務手当を支給しないという給特法により、際限ない時間外勤務が常態化し、自主的に研修する時間も気持ちも奪っています。
本来は自主的な研修をしない教師など存在してはいてはいけないのですが、そのような教員が多数派になってしまっていることが分かります。
この調査により、教員免許更新制度に対してほとんどの教委が負担に感じていることが分かります。
教員の負担減や教員不足を解消するためにも、教員免許更新制度の見直しまたは廃止は不可欠でしょう。
しかし、「教員の負担減」を「教師が楽したいから」と取られてしまっては、世間の理解を得られません。
教員免許更新制度の見直し・廃止は、教員の仕事の精選をして、授業に専念できる状態にするとともに、国や教委の研修に頼らず、「絶えず自ら学び続ける」というマインドチェンジが不可欠でしょう。