新型コロナウイルスの感染拡大を受け、「短縮授業」または「分散登校」を行う自治体が、神奈川県、福岡県、埼玉県などあります。また、オンライン授業を行なっている自治体も3割程度あります。
その際、気になるのは、学校に登校せずオンライン授業を受けている、または学校から与えられた課題を家でしている時の扱いです。
文部科学省はその扱いを「出席停止」としていますが、そのことに対して疑問の声も上がっています。
新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、さいたま市立学校で2学期から開始されたオンライン授業の「出席停止」扱いについて、保護者から疑問の声が上がっている。市教育委員会は、緊急事態宣言中はオンライン授業を並行して実施し、文部科学省の通知に基づいて出席停止に扱うと説明している。保護者らは宣言中のオンライン授業について、「出席扱いにしてほしい」と訴えている。
2021年9月26日 埼玉新聞「同じ授業なのに…さいたま市のオンライン授業は『出席停止』、保護者ら『出席扱いに』 文科省『趣旨違う』」
出席停止とは
出席停止(出停)とは、一言で言うと「児童生徒が登校してはいけない」状態、扱いになることです。
出席停止は、学校教育法第35条・第49条または学校保健安全法第19条(旧・学校保健法第12条)の規定に従って行われる措置である。いずれの場合も出席停止となった日数は「出席しなければならない日数」から減じるので、学校に「登校しない」状態であっても、欠席にはあたらない。この扱いは忌引と同様である。
Wikipediaより
義務教育の場合、学校教育法による「問題行動」の対応として出席停止が命じられることはほとんどないので、学校保健安全法による出席停止の方が馴染みがあるでしょう。
インフルエンザになって休んでも休み扱いにならない
という話を聞いたことがある人も多いと思います。この場合は出席停止は、感染症拡大防止のために行われるので、出席されたら困るのです。つまり、
出席してはいけない=欠席扱いにはならない
のです
出席停止で不利益は?
学校からは当初、オンラインは「出席」にすると連絡が来ていたが、「出席停止」と説明が一転。子どもたちは学校と同じ生活リズムで、試行錯誤しながらオンライン授業に臨んでいただけに、「出席にならないと聞いてショックだった。伝えるかどうか迷ったけれど、子どもたちもがっかりしていた」と話した。
2021年9月26日 埼玉新聞「同じ授業なのに…さいたま市のオンライン授業は『出席停止』、保護者ら『出席扱いに』 文科省『趣旨違う』」
「出席扱いではない」ということで、ネガティブな印象をもってしまうかもしれませんが、インフルエンザで出停になっても、身内に不幸があって忌引を取っても「授業を要する日」が減るだけで、欠席日数が増えるわけではありません。だから、そのことで不利益を被ることはないのです。
文部科学省は9月10日、今までの通知を整理し、「義務教育段階における登校の取り扱いに関するフローチャート」を公開しました。
それによると、
- 学校や学級が臨時休業になった場合は、登校は必要ない(出席にも欠席にもならない)。
- 分散登校の場合、「出席停止・忌引き等の日数」として記録され、出席にも欠席にもならない。
- 学校が臨時休業になっていない場合、本人や家族に発熱が見られたら、登校はできない。「出席停止・忌引き等の日数」として記録され、出席にも欠席にもならない。
- オンラインを活用した学習の指導を受けたと校長が認める場合には「オンラインを活用した特例の授業」として記録。
- やむを得ず学校に登校できない場合の、自宅等で行ったオンラインによる学習の取扱いは、学校に登校しなければならない日数には含まれず欠席とはならない。
現実的に、オンライン授業を選択した日に
- オンライン授業に参加した
- 何らかのトラブルによりオンライン授業に参加できなかった
- オンライン授業を欠席した
ことの区別は難しいでしょう。現在1日中オンライン授業をしている自治体・学校はまだ少ないことを考えると、「出席停止」扱いは妥当だと思われます。
不登校児のオンライン授業は出席なのに・・・
文科省は2021年2月、オンライン授業を非常時のやむを得ない場合の特例の授業とし、登校しなくても「欠席」とはせず、「出席停止」にすると通知しています。
非常時に臨時休業又は出席停止等によりやむを得ず学校に登校できない児童生徒については、従前から指導要録上の出欠の扱いにおいて、登校できなかった日数は「欠席日数」としては記録しないこととされているため留意すること。
「感染症や災害の発生等の非常時にやむを得ず学校に登校できない児童生徒の学習指導について(通知)」
その上で、非常時に臨時休業又は出席停止等によりやむを得ず学校に登校できない児童生徒について、以下の方法によるオンラインを活用した学習の指導(オンラインを活用した特例の授業)を実施したと校長が認める場合には、指導要録の「指導に関する記録」の別記として、本通知の別紙1から別紙4までに示す記載することが適当な事項に留意しながら、非常時にオンラインを活用して実施した特例の授業等の記録について学年ごとに作成すること。
しかし、文部科学省は2019年10月の通知「不登校児童生徒への支援の在り方について」で、ICTを活用したオンライン授業も出席扱いにするよう求めています。
登校児童生徒の中には,学校への復帰を望んでいるにもかかわらず,家庭にひきこもりがちであるため,十分な支援が行き届いているとは言えなかったり,不登校である ことによる学習の遅れなどが,学校への復帰や中学校卒業後の進路選択の妨げになっていたりする場合がある。
「不登校児童生徒への支援の在り方について(通知)」別記2
このような児童生徒を支援するため,我が国の義務教育制度を 前提としつつ,一定の要件を満たした上で,自宅において教育委員会,学校,学校外の 公的機関又は民間事業者が提供するICT等を活用した学習活動を行った場合,校長は, 指導要録上出席扱いとすること及びその成果を評価に反映することができることとする。
そのことを矛盾と捉えている自治体もあります。
さいたま市教委を含め多くの自治体は文科省の通知に従っているものの、福岡市教委などは「矛盾が生じて説明できない」として、いずれも出席扱いにしている。
2021年9月26日 埼玉新聞「同じ授業なのに…さいたま市のオンライン授業は『出席停止』、保護者ら『出席扱いに』 文科省『趣旨違う』」
しかし、2019年10月の通知「不登校児童生徒への支援の在り方について」は、「義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律」の目的「不登校児童生徒に対する教育機会の確保、夜間等において授業を行う学校における就学機会の提供その他の義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等を総合的に推進」するために、過去の通達との性合成を図り、法の趣旨を終始徹底させるためのものです。
文科省教育課程課は「2月の通知はコロナの関係で出しており、目的や趣旨が違う。」としている。
2021年9月26日 埼玉新聞「同じ授業なのに…さいたま市のオンライン授業は『出席停止』、保護者ら『出席扱いに』 文科省『趣旨違う』」
出席停止でも不利益はなし
これまで述べてきたように、出席停止だからと言って不利益を被ることはありません。
「出席ではない」ということで入試等で不利益が出ないかと心配になる気持ちはありませんが、これまでも感染症や忌引で不利益が出たことはないので安心していいでしょう。
文部科学省は、不利益が出ないように各教育員会に繰り返し要請していますし、文部科学省のサイトのQ&Aにも記載されていますが、教育委員会への要請が保護者の耳に届くことはまずないし、文部科学省のサイトを見に行く人もあまりいないでしょう。
文科省は教育委員会と連携しながら保護者の不安を取り除く発信をする必要があるでしょう。
参考:文部科学省「学校における新型コロナウイルス感染症対策に関する Q&A」
関連記事