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作家の時間に出版作業する子どもたち
月末の作家の時間。鉛筆を原稿の上に走らせて出版作業に集中している子どもたちの姿が見られます。これまで書いてきた作家ノートを見るとびっしりと下書きが書かれています。中には2400字以上の大作も。下書きの修正の跡を見ると、これまでに悩んできたところが分かります。
作家の時間は基本的に書きたいことを書くというスタイルで進んでいきますが、クラスでジャンルを決めて月に一作品は出版するように求めています。月末は、締切日なのです。完成した作品は、友達と読み合って交流したり、保護者の方に読んでもらってコメントをもらったりして自分に書く技術やモチベーションに生かします。また、この作品は、公文の「おはなしエンジェル こども創作コンクール」に提出します。
相手や目的に応じて
国語科の指導事項には「相手や目的に応じて」という文言があります。つまり、誰に向けて、何のために書くのかということを明確にして「書くこと」の活動に取り組むということです。
物語を書く相手や目的を考えてみると・・・
- 友達に読んでもらいたい
- ペア学年の2年生に読んでもらうため
- クラスの物語文集をつくるため
- 物語を読んで保護者の方に楽しんでもらうため
いろいろと考えられます。意見文でも報告文でも説明文でも相手や目的を明確にして取り組んできました。
相手や目的は一緒でなくてもいい
しかし、作家の時間で子どもたちの様子を見ていて、ふと思ったことがあります。相手や目的は、みんな一緒でなくてもいいなあと。
子どもたちは、書くこと自体を楽しんでいたり、身近な友達に読んでもらうことを楽しんでいたりしていました。とてもシンプルな相手と目的だからこそ、作品を書き上げても次から次へと作文を書くことに取り組めるのだと思いました。
「それで?」の法則
目的について、子どもたちともう少し深く考えたことがあります。作家の時間の実践書「インザミドル」に紹介されている『「それで?」の法則』です。作品を読み終えた後に、子ども作家に向けて「それで?」と問うのです。子ども作家は、
- この作品で何を伝えたかったのか
- なぜ、書いたのか
- 何のために書いたのか
などを答えます。この問答を繰り返すのが『「それで?」の法則』です。
子どもたちにロバート・フロストの言葉を紹介しました。
「作者の目に涙なければ、読者の目に涙なし。作者に驚きなければ、読者に驚きなし。」
No tears in the writer, no tears in the reader. No surprise in the writer, no surprise in the reader.
自分自身に向き合うことが大切
この後に、日常生活の中で、心が動くできごとを探したり、振り返ってみたりするように伝えました。そのできごとを中心に物語を書いたら、きっと読者にも伝わるものがあるはずです。このように伝えると悩んでしまって、止まってしまう子もいました。
『いったい自分は何が書きたいのだろう?』と自分自身に向き合っている状態です。その子の横に座って、一緒に題材集めをしました。どんなことに興味があるのだろう?思い出として残っているのだろう?どんなことに心が動いたのだろう?そんなことを質問しながら、その子の書きたいことを探っていきました。
フォーマットと向き合うことも思考を掘り起こすことも大切な支援
作家の時間に取り組む前までの私の授業では、クラス全員がきちんと書けるようにするためにフォーマットを用意して悩まずに書けるようにしていました。相手や目的の設定、題材集め、モデル文の用意、構成のワークシートなどなど。
フォーマットを用意することも支援の1つとして考えておくことは大切ですが、自分と向き合い、悩み、伝えたいことや書きたいことを掘り起こすことも重要です。子どもが止まっている状態(頭では、ものすごく思考が動いている)に価値を見出せるようにならなくてはいけないなと思いました。
※この記事は、小学校教諭「イマシュン」さんの投稿です。