なんのために国語の教科書を読むのか
5年生の国語の教科書には「たずねびと」という物語文があります。5年生の女の子のアヤが広島の原子爆弾で亡くなった同じ名前の少女「アヤ」を調べることを通して、原爆の恐ろしさや亡くなった方々に思いを寄せる物語です。
この物語をどのように読んでいくか考えました。
・平和の学習ができそうだから、広島原爆に関する資料を用意しようか
・この物語と同じくらいのレベルの物語の本を紹介しようか
・この物語についてみんなで語り合おうか
・作家の時間で書いているノンフィクションに生かそうか
・指導書に紹介されている初発の感想から段落ごとに読んでいこうか
今回は、作家の時間で書いているノンフィクションに生かそうと思いました。この「たずねびと」はフィクションですが、ファンタジーではないので、ノンフィクションとして読んでも違和感はありません。
「情景に意味をもたせる」ミニレッスン
夏休み前までの指導で、子どもたちは情景を取り入れて作文を書くことができるようになってきました。今回はワンステップレベルを上げて、「情景に意味をもたせる」というミニレッスンをしました。
「たずねびと」では、最後の段落に原爆ドームのそばの川についての情景が書かれています。ただの「きれいな川」が、アヤさんを通して原爆の事実を知り、亡くなった方々に思いを寄せることで主人公の特別な情景表現に変わります。なぜ、同じ川の情景表現が変わったのか話し合いました。
アヤさんが原爆について知ることで、多くの方がこの川で亡くなったことを知った。だから、特別な場所であると感じられるようになったのではないか。
という意見が多かったです。
学んだことを通して、自分の作文の情景表現にも意味をもたせられるようにしました。これは難しい技なので、子どもによっては情景の説明だけになってしまう子もいます。しかし、明らかに情景を意識して文章をかけるようになってきました。情景が上手な文章は、読者がその場をイメージできるようになるので文章の世界に入り込みやすくなります。
心情表現を磨くミニレッスン
次の時間には、心情表現を磨くためにミニレッスンをしました。この物語では、主人公の心情に「―(ダッシュ)」を用いることが多いです。原爆資料館を訪ねる第五段落だけに絞って、「―(ダッシュ)には、どんな主人公のどんな心情が込められているのか」話し合いました。
子どもたちは、
信じられないという気持ち。驚きや悲しみなどが込められている。
と理由とともに発言していました。
学んだことを生かして今度は、自分のノンフィクションに「―(ダッシュ)」が入れられそうなところを見つけてみました。全員とはいきませんが、修正して「―(ダッシュ)」を入れようとしていた子がいました。
カリキュラムは弾力的に運用
作家の時間では、物語、詩、ノンフィクションなどの文章を取り扱っています。だいたい1か月単位でジャンルの変更をしています。その都度、必要な技を学ぶために教科書の文章を読んでいます。そうすると、指導書に紹介されているような物語文や説明文ごとの単元構成は、合わなくなってきます。
私の考えるミニレッスンに合わせて題材を選ぶので、指導書では、12月に取り扱っている文章を5月頃に取り扱うこともあります。カリキュラムを弾力的に運用することで、効果的な「読み」になることを目指しています。
教科書は読書をより楽しむための技法を学ぶテキスト
読書も同じです。今読んでいる本をよりよく読むために、教科書の文章で技を学びます。私は、これまで教科書の物語を楽しく読めるように多くの時間を使ってきましたが、読書というものは本来、読書自体が楽しいもので、楽しくするというのもおかしなことだと思いました。
要は、自分にぴったりな本を選書して、読書を楽しめばよいわけです。そして、教科書は、読書をより楽しむために必要な技を学ぶテキストであると思います。
※この記事は、小学校教諭「イマシュン」さんの投稿です。
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